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1. ラテン語による「主の祈り」には(翻訳の違いもあって)異読がある
スヴェーデンボリの念頭にはどのような「祈り」があったのでしょうか? 「著作」に登場する「主の祈り」から,これを探り出してみます.
典拠した本とその略号は,秘義:『天界の秘義』,真教:『真のキリスト教』,講解:『黙示録講解』です.
天にいます私たちの父よ
◇“Pater noster qui es in coelis.”
⇒真教 113:5, 真教 Index Mem.16.17(注)により支持される.
別読みとして es なし(秘義 8328)
es→est (真教 112:6; 306)
qui なし(秘義 6887:3)
あなたの御名が聖なるものとなりますように
◇“Sanctificetur nomen tuum.”
⇒秘義 2009:2 その他ほとんどの個所で支持される.
例外的に Sanctificatum sit nomen tuum(秘義 1754:2)
あなたの御国が来ますように
◇“Veniat regnum tuum.”
⇒秘義 2009:2, 真教 112:2, 6; 113:6,講解 295:3, 1217 で支持される.
別読み Adveniat regnum tuumもきわめて有力である.
(真教 113:5, 真教 Index Mem.16.17, 講解 48; 683:4 )
あなたのみこころが行なわれますように
◇“Fiat voluntas tua,”
⇒秘義 2009:2, 講解 48; 295:3, 683:4 で支持され,別形なし.
天界の中のように,地の上でも
◇“sicut in coelo etiam in terra.”
⇒秘義 2009:2, 講解 48; 683:4 で支持される.
別読み etiam→ita(講解 295:3)
in terris sicut in coelis(秘義 1285; 2009:2, 講解 1217)
私たちの日ごとのパンを,きょう私たちにお与えください.
◇“Panem nostrum quotidianum da nobis hodie.”
⇒秘義 2838:4 より支持される.
別形として Da nobis panem cotidianum(秘義 680)
私たちの負いめを赦してください,私たちもまた私たちに負いめを持つ人を赦しますから.
◇“Remitte nobis delicta nostra, sicut nos remittimus* delinquentibus contra nos.”
⇒真教 459:12より支持される.しかしこれは『ウルガタ』とはずいぶん異なる.
私たちを試練に導かないで,悪から救ってください.
◇“Ne inducas* nos in tentationem, sed libera* nos a malo.”
⇒秘義 1875; 3605:2より支持される.
別形として tentationem→tentationes(講解 631)
御国と力と栄光は,永遠にあなたのものでありますから.アーメン.
◇“Tuum est regnum, potentia et gloria, in saecula. Amen.”
⇒秘義 5922:17; 10248:5, 講解 48:2より,
また,「アーメン」は講解 496より支持される.
文法的に補足(*)すれば,
“remittimus”は(完了でなく)現在形.(すなわち,「赦しましたから」でなく(今も)「赦しますから」.しかし「赦しました」の読みもある.
“inducas”は接続法,“libera”は命令法.こうしたことは今後,「講座」で述べます.
以上から,スヴェーデンボリには伝統的な「ラテン語訳聖書」とはちょっと違った「主の祈り」が念頭にあったようである.
☆余談:冒頭の言葉パテルノステルから,「主の祈り」のことを別名「パテルノステル」と呼ぶ.なお『天界の秘義』はロンドンの「パテルノステル通り」に住む印刷人ジョン・ルイスのもとから出版された.
注 アルカナ出版訳では割愛されている目次直後の「体験記要約」であり,16は本文No.112の,17は本文No.113の要約となっている.
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