DEMONSTRATIVES; THE REFLEXIVE PRONOUN

第 15 章

指示詞,再帰代名詞

 序論で,単語が直接に物事を示すことはほとんどない,と述べました.この例外の第一のものは,指示詞,すなわち“これ”や“あれ”といった“指し示す”語です.

 ラテン語にはそれらの言葉がたくさんあります.通常,それらは“指示代名詞”に分類されます.しかし,しばしば形容詞のように用いられ,形容詞のように三つの性すべてで出現するので,それらを指示形容詞と見なすほうが首尾一貫するように思えます.また形容詞のように実詞的にも用いられます.基本的に,もっぱら代名詞として機能する他の単語もあります(§62) .

 最も普通の指示詞は hicille です. hic は,“近くのもの”を含意し,おおよそ“this(これ)”に相当し, ille は,“より離れたもの”を含意しおおよそ“that(あれ)”に相当します(§63) .

 しかし,二つの特別な意味に注意しなければなりません.まず第一に,スヴェーデンボリは hic を“後者”の意味で, ille を“前者”の意味で極めて頻繁に使用しています.おそらくこの論理的根拠は,指示詞の付いているその箇所の文に“後者”が近いこと,また“前者”がより離れていることにあるのでしょう.

 第二に, ille は明確な指示力なしに使われることがあります.この現象は, ille がフランス語の le, la, les のようなロマンス語の定冠詞の“先祖”であるという事実に関係しており,これはもっともらしく思えます.
 Illes qui credunt... や Illa quae mentis sunt... といった文にしばしば出会うでしょう.直訳すれば「あれら信じる者たちは……」,「あれら心に存在する物は……」となりますが,ここには「これら」と対比されるものは何ら明確でも,含意されてもなく,“より離れたもの”の意味はありません.一方,hic は通常,指示力を持っているようです.

 hicille の変化形は次のようです(p66) .

単数 男性 女性 中性 複数 男性 女性 中性
主格 hic haec hoc hi hae haec
対格 hunc hanc hoc hos has haec
属格 hujus hujus hujus horum harum horum
与格 huic huic huic his his his
奪格 hoc hac hoc his his his

単数 男性 女性 中性 複数 男性 女性 中性
主格 ille illa illud illi illae illa
対格 illum illam illud illos illas illa
属格 illius illius illius illorum illarum illorum
与格 illi  illi illi illis illis illis
奪格 illo illa illo illis illis illis

 ここで再帰代名詞の簡単な語形変化も紹介しておきましょう.これは単数も複数もすべての性も同形です,そしてその意味するところから主格はありません.その変化形は次のようです(§38)

対格 se
属格 sui
与格 sibi
奪格 se

 再帰代名詞は,基本的にそれが出現する節で明示されるかまたは含意される主語を指します.例えば,
Homines qui se amant 「自分自身を愛する人間」,
Sibi dixit 「彼女は自分自身に言った=つぶやいた」,
Illud fecit a se 「彼は自ら(直訳:自分自身から)行なった」です.
しかし,amor sui「自己愛」の句に注意してください.そこでは amor は目的格属格★1としての再帰代名詞を伴って動詞的名詞★2のように振る舞い,その先行詞は amor の含意する主語です.
 それで,Angeli possunt percipere in malis aorem sui「天使たちは悪い者の中の自己愛(自分自身の愛)を知覚することができます」のような文があれば,そのとき sui は主語の angeli に言及しているのではありません.

 一方,英語では“-self ”代名詞を再帰的に用いること,それらはまた強調のために用いられること――“For he himself has said it ” “I haven't seen the house myself” “We should act out of a love for truth itself ”――を述べておく必要があります.この用法のためにラテン語では別に「強意の」代名詞がありますが,それは第20章で示されるでしょう.再帰代名詞にこの意味はまったく許されません.

 本章の語彙に,二組の単語 qualis/talisquantus/tantus が示されていますが,それらについて注釈します. qualisquantus はそれぞれ「どれだけの種類の,どれだけの性質の」と「どれだけ」を意味し,一方 talistantus はそれぞれ「その種類の,その性質の」と「それだけ」を意味します.それらはしばしば相関的に,すなわち,一組の関係として―― Qualis est voluntas, talis est intellectus 「意志がどんな種類のものであるか(によって),理解力もそうしたものです」,Homo tantam fidem habet, quantum amorem「人間は愛と同じだけの信仰を持ちます」――用いられます.
副詞的な形式 quantumtantum もまたよく見られます―― Homo tantum fidem habet quantum amorem 「人間は(人を)愛するほど,それだけ信仰を持ちます」★3
 記憶を助ける工夫として,「q は t を定める」そして「t- 動詞」が主動詞である,と覚えておくとよいでしょう.……★4

語 彙 [15]

essentia, -ae, f. (名)本質 essence, fundamental nature
hic, haec, hoc  これ,後者 this, the latter
ille, illa, illud あれ,前者 that, the former
qualis, -e (adj.) (形)どのような〜 of whatever kind
talis, -e (adj.) (形)そのような〜 of that kind
quantum (adv.)  (副)どれだけ〜 to whatever extent
tantum (adv.) (副)それだけ〜 to that extent
quantus, -a, -um (adj.) (形)どれほどの〜 of whatever amount
tantus, -a -um (adj.) (形)それほどの〜 of that amount
se, sui, sibi, se (再帰的に)自分自身 (reflexive) -self
simul (adv.)*1 (副)同時にat the same time

*1 “simultaneous”の語源.

練習問題

A.訳しなさい.

1. Quod amor et sapientia sint homo, etiam constare potest ex angelis coeli, qui quantum in amore et inde in sapientia a Domino sunt, tantum in pulchritudine homines sunt. (DLW 287)

2. Illis, qui in malo et simul in falso sunt, qui omnes sunt in inferno, est quidem potentia inter(=among) se, malus enim malefacere potest,... (DP 19)

3. Ipsa charitas spectat primum bonum animae hominis, et amat illud, quia per id(=charitatem) fit conjunctio. (De Char. III:4)

C.今日学んだ形をいつものように適当する語形変化表に記入しなさい.



★1 
【文法】本書14ページの訳注参照.
★2 【文法】verbal noun 広義では(英語の)動名詞と不定詞を指し,狭義では動名詞のうちで名詞的性質の強いものだけを指します.
★3 スヴェーデンボリはこの表現法を極めて多く用いています.

  『天界の秘義』4067:3番から例文を追加します――
…quale autem bonum est apud hominem, talis societas angelorum est apud illum, et quale malum est apud hominem, talis societas spirituum malorum est apud eum; homo sibi ipsi adsciscit societates, seu semet ipsum ponit in societate talium, nam simile simili associatur, …
……しかし,人間のもとに存在する善のままに(quale) ,そのように(talis) その人間のもとに天使たちの社会が存在します.人間のもとに存在する悪のままに,そのように彼のもとに悪霊らの社会が存在します.その人間が自分自身のところにその社会を引き寄せます,すなわち,彼はそうした社会の中に自分自身を置くのです.なぜなら,似た者は似た者と交わるからです.……

★4 ここに次のような説明があります.
「これらの相関関係を表現するため,英語には驚くほどの数異なる工夫〔=様々な表現法〕があることにも注意しておくとよいでしょう」