NOMINAL CLAUSES
第 9 章
名 詞 節
二つの文“John saw the tree”(ヨハネは木を見た)と“John saw that the tree had begun to blossom”(ヨハネは木がつぼみ始めたのを見た)は,基本的な構造は同一です.それぞれに,主語,他動詞,そして目的語があります.しかし,最初の例文では,目的語はつの語で表わされていますが,一方,第二の例文では,目的語はつの語で,すなわち節で表わされています.その節はヨハネが見たものを示していますが,これは単なる木ではなく,木についての何かです.節の中の一つの語が“見た”ことの目的語ではなく,節全体が目的語であり,それゆえ,名詞として機能しています.
スヴェーデンボリはしばしば単一の言葉で表現できない相互に影響し合う概念を扱ったので,この後者の種類の“名詞”を非常にしばしば使用しています.名詞節は非常に頻繁に,『天界の秘義』の序文★1ですら用いられているほどです.これは実際にその後の本文の前触れです.
名詞節のために標準的に用いられる統語上の決まりは,きわめて単純で融通性があります.節中の動詞は接続法をとり,その節は連結詞“quod”(無変化)によって導かれます.こうして,知られるべき事実や検討されるべき命題として扱われる amor est 「愛が存在する」という文は,
Homo novit quod amor sit 「人は愛が存在することを知っています」(『神の愛と知恵』1 )の文中で,名詞節 quod amor sit となります.
これらの節の大多数が,他動詞の目的語かまたは受動態や自動詞の主語として,認識または表現の動詞と関連するのは,おそらく自然なことでしょう.それらの場合,節そのものには格を示すものは何もなくても,私たちはその節をそれぞれ目的格または主格と考えます.
こうした種類の節は古典ラテン語で起こりますが,しかし,まれです.“間接話法”では不定法がはるかに頻繁に用いられます.そうした不定法の主語や目的語は対格です――Scio angelos intelligere fidem 「私は天使たちが信仰を理解することを知っている」.対格は二つの機能に役立っているので,この構文の中ではあいまいさの可能性があり★2,特に複文の節ではそうなります.そして不定法には時制と態のすべての組み合わせがないので,不定法の節でできることの範囲は,名詞節のそれよりも限られています.スヴェーデンボリはしばしば古典的な構文〔不定法〕を用いました,しかし“quod-節”のほうがはるかに多く用いられています.
英語では動詞の後ろに名詞節がたやすく用いられます――“I cannot prove that God
exist”(私は神が存在することを証明できない).しかし,非常に形式的な文体に限っては,そうした節は文の始まりに用いられます――“That God exist is nevertheless not open to doubt”(神が存在することは,やはり疑ってはならない).この順序が望ましいとき,英語では動詞的名詞★3を用いた句を構成する(“The existence of God is nevertheless not open to doubt”)か,節と同格の名詞で始める(“The fact that God exists.... ”)かします.“The fact that”は単純に quod と同じです.
語彙に,causa と quia が載せてあります.スヴェーデンボリは,これらをしばしば一緒にして次のように使用しました――causa est quia....(直訳:“the reason is because”).直訳調の拙い英語になっていますが,「その理由は〜」(the reason is that....)という意味です. est の後ろに名詞節がくることを期待する人がいるかもしれません,そして“quia-節”をそうした一例と見なすべきものに思えます.これはまた ex causa quia....(for the reason that.... 〜の理由から)の場合もそうです.ここでは“quia-節”を causa と同格と見なすのが最善です.
causa のもう一つの標準的な用法は,実質的には前置詞です.これは属格を先行させた奪格の形とのき,「〜ゆえに」「〜のために」を意味します.それで, amoris causa は「愛ゆえに」「愛のために」と訳すことができます.
語 彙 [9]
| causa, -ae (f.)*1 | (名)原因,理由cause, reason, means |
| (属格を先行させ,奪格(causa) で,“〜のために”“〜の理由で”) | |
| consto, -are, -iti, -atus*2 | (動)確定している(明らかである)“stand together, ”be established |
| constat | 知られている it fits, it follows, it is established |
| cor, cordis (m.) *3 | (名)心臓,心 heart |
| (注意:単語の中で語尾形がつの形容詞は,男女形と中性形の語尾です) | |
| finis, finis (m.)*4 | (名)目的,終局,限界 end, goal, purpose, limit, boundary |
| finitus, -a, -um*5 | (形)限定された finite, limited |
| infinitus, -a, -um | (形)限定されない,無限の infinite, unlimited |
| inde (adv.) | (副)そこから,それゆえ from this, as a result of this, on this basis |
| mundus, -i (m.)*6 | (名)世(界) world |
| nam (conj.) | (接)なぜなら for (=“because ”) |
| non (adv.) | (副)〜でない(動詞の否定)not(negative for verbs) |
| quia (conj.) | (接)なぜなら,〜ので because, for |
*1 “cause”の語源.
*2 “constant”の語源.[con+sto]
*3 “accord, concord, discord, record”の語源.
*4 “final, finish”の語源.
練習問題
A.和訳(英訳)しなさい.
| 1. Inde constare potest, quod Dominus vivat cum hominibus et quod Dominus
sit coelum, et ex causa, quia bonum a Domino est Dominus cum hominibus
et angelis. (cf. HH 12 ) 2. Inde patet quod Divinus Amor et Divina Sapientia sint substantia(=substance) et forma. (cf. DLW 43 ) 3. Quod ex sole mundi spiritualis veniant calor et lux, et quod calor veniat ex Divino Amore Domini, et lux ex Divina Sapientia Domini, videatur. (cf. DLW 296) 4. これらの文の名詞節の“格”を特定しなさい.…… |
注
★1 同書の扉(内表紙 Title page )に書かれた次の“書名”です.
ARCANA COELESTIA quae in SCRIPTURA SACRA, seu VERBO DOMINI sunt, detecta:
Hic Primum quae in GENESI. Una cum Mirabilibus Quae visa sunt In Mundo
Spirituum, & in Coelo Angelorum.
★2 この文章の意味を詳しく説明します――
逐語訳すれば「私は知る・天使たちを・理解すること・信仰を」であり,文中には
angelos(複数対格)と fidem(単数対格)があって,私が知っている(scio)のはどちらなのか,このままでは不明です(=あいまいさ).ここでは対格が主語(angelos)と目的語(fidem)の働きをしています(=二つの機能).そしてこのことは文脈から判別するしかありません.
★3 文法的用語としての“動詞的名詞”とは the writing of novels の writing
です.ここの例文では existence(単なる名詞です)を指しているので,“動詞的名詞”の用語を“動詞的な色彩の濃い名詞”の意味で使用しているようです(existence
が existing となっていれば用語使用上の問題はありません).