ADJECTIVES
第 8 章
形 容 詞
前に述べたように,大多数の単語は何か特殊な現象よりもむしろ現実のカテゴリーに関係しています.名詞はカテゴリーの構築に関連すると考えてよいでしょう.特定されるある現象に向けて言及する範囲を狭めるために,名詞は“修飾される”必要があります.その機能をもつ語または語群は,それゆえ,“連体的”★1と呼ばれます.「彼の住所は,本に載っている」という文はまず役立たないでしょう.「彼の住所は,電話の上方の棚にある茶色の小さな本に載っている」なら,その範囲は相当に狭まっています.
ここで,“電話の上方の”“棚にある”という句や,“茶色の”“小さな”という語は連体的な機能をしています.最初のものは“棚”を,後の三つは“本”を修飾しています.これらの連体的な要素によって示されるカテゴリーは必ずしも名詞のカテゴリーよりも“小さい”かまたはより特殊なものではないことに注意してください.意味を重ね合わせることが〔その名詞の〕特殊性を増すことになります.
連体的に用いられる単語は形容詞と呼ばれます.英語では,ほとんど常に形容詞を直接に名詞の前に置きます.おもな例外は,“else”と“alone”それと時折“only”です.“a passenger airplane”(旅客機)と“an airplane passenger”(飛行客)といったような語順のもつ決定的な力に注意してください.与えられた語〔passenger〕が名詞的にあるいは連体的に機能して働くかは,両方の機能が手順のカテゴリーよりもむしろ“構造上の”カテゴリーを含むという事実によります★2.
ラテン語では,形容詞は,三つの性のどれをも示すことができるように語形変化するという事実から,名詞と基本的に区別されます.連体的に用いられる形容詞は,それが修飾する名詞と同じ性・数・格を示す必要があります.形容詞の位置は名詞に先行しても後ろから続いてもかまいません(§26,§27) ,しかし,スヴェーデンボリの文体では,通常,名詞の直前または直後です.
しかし,形容詞はそれが修飾する名詞と同じ格変化に従う必要はありません.格変化は,実際に,個々の形容詞の特徴であって,それぞれに学ばなくてはなりません.
これは難しいことではありません,形容詞にはたった二つの基本的なパターンしかないからです――第一第二変化と第三変化です.その形は次のものです(与格は第10章で示します).
| 第一第二変化 | 第三変化 | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| 男性 | 女性 | 中性 | 男・女性 | 中性 | |
| 単数主格 | bonus | bona | bonum | spiritualis | spirituale |
| 対格 | bonum | bonam | bonum | spiritualem | spirituale |
| 属格 | boni | bonae | boni | spiritualis | spiritualis |
| 奪格 | bono | bona | bono | spirituali | spirituali |
| 複数主格 | boni | bonae | bona | spirituales | spiritualia |
| 対格 | bonos | bonas | bona | spirituales | spiritualia |
| 属格 | bonorum | bonarum | bonorum | spiritualium | spiritualium |
| 奪格 | bonis | bonis | bonis | spiritualibus | spiritualibus |
第一第二変化形容詞に説明の必要はないでしょう,それらの語尾はすでに学んだ名詞の語尾と同一だからです.しかし第三変化形容詞には落とし穴があります.
最初の落とし穴は単数主格です.ある形容詞は三つのすべての性で同一の形をとり(§59) ,あるものは spilitualis のように,男・女形と中性形が別です(§57) .またあるものは acer, acris, acre のように,すべての性が別形です(§58) .これは単数主格だけにあてはまることです★3.
多くの場所に -i- が繰り返されていることにも気づくでしょう――すべての性の単数奪格と複数属格,それと中性の主格と対格です.ある名詞もまた,多かれ少なかれ,このパターンに従います(§54) .…….
英語もラテン語も,形容詞を名詞的に,すなわち“実詞として”用いることがあります,しかしそうするための規則はだいぶ異なります.英語では,定冠詞とともに形容詞を用いるのが正規の様式であって,それもしばしば集団的な意味です――“the land of the free and the home of the brave”(自由の民の地そして勇者の故郷).そして“the land of a free and the home of a brave”とも“the land of the frees and the home of the braves”とも言いません★4.例外は“neurotics”(神経症学)といった完全に名詞化した専門用語です.
しかし,ラテン語の形容詞に,性・数・格の表現を避けた形はありません★5.単数主格の bonus, bona, bonum はそれぞれ善い男,善い女,善いものを示し,複数主格 boni, bonae, bona はそれぞれ,善い男たち,善い女たち,もろもろの善いものを示します.生物的な性がふさわしくてそれが特定できないときは男性形が用いられます.
基本的には以上に述べたようなことですが,時々,実詞として用いられた形容詞には,その形容詞の示す属性の主体よりもむしろ属性そのものを示す傾向があるように思えます. verum(真であるもの)と veritas(真理)の間に境界線を引くことは困難かもしれません★6.普通,最終決定権は文脈にあって,真剣な学習者は,注意深く読む必要があります.
語 彙 [8]
| amo, -are, -avi, -atus | (動)愛する (to) love |
| arcanus, -a, -um | (形)隠れた hidden, secret |
| bonus, -a, -um*1 | (形)善い good |
| coelestis, -e | (形)天界の heavenly, celestial |
| (注意:単語の中で語尾形がつの形容詞は,男女形と中性形の語尾です) | |
| Divinus, -a, -um*2 | (形)神の,神的な of God, divine |
| facio, facere, feci, factus*3 | (動)行なう(多義語) do, make |
| falsus, -a, -um*4 | (形)間違った,偽りの false |
| infernalis, -e | (形)地獄の of hell, hellish |
| lex, legis (f.) | (名)法律 law |
| malus, -a, -um*5 | (形)悪い bad, evil |
| naturalis, -e | (形)自然的な having to do with nature, natural |
| spiritualis, -e | (形)霊的な having to do with spirit, |
| verus, -a -um*6 | (形)真の true |
*1 “bonus”(ボーナス)の語源.
*2 “divine”の語源.
*3 “facile, facility”の語源.
*4 “false”の語源.
*5 “malice”の語源.
*6 “very”の語源!
練習問題
A.訳しなさい.……
| Amare verum et bonum propter verum et bonum est facere verum et bonum; facere verum et bonum est quoque amare Dominum et amari a Domino. Bonum et verum sunt a Domino, et Dominus est in bono et vero; facere bonum et verum est recipere Dominum. (cf. HH 350) Intellectus coelestis est intellectus verus, et est intellectus veri. Est quoque intellectus propter coelum et propter verum. Intellectus verus est lux hominis, et venit in hominem per solem coeli a Domino. Lux vera est lux coeli; est Dominus in coelo. Recipitur in homine in amore. Homo in luce est homo in veris, et intelligit vera terra et coeli. |
C.今日学んだ形をいつものように適当する語形変化表に記入しなさい.
注
★1 【文法】adnominal 形容言の(名詞を修飾する).
★2 このあたり抽象的で難しいと思います.私なりに解釈すれば,「英語の“passenger”の語(名詞)が“旅客用の”(連体的)と“旅客”(名詞的)に両方に使うことができるのは,その語(名詞)に両方の機能があるから」という意味でしょう.そして「手順のカテゴリー」と「“構造上”のカテゴリー」とは何か,が問題となりますが,英語には形容詞を用いるための手順としての“格変化”(これが手順のカテゴリーでしょう)はありません.それで(本文中の“むしろ”の言葉)文章構成上で重要な働きをする語順(これが“構造上”のカテゴリーでしょう)に英語はその機能を持たせている,ということでしょう.
★3 小林『楽しく学ぶラテン語』では,これらをそれぞれ audax 型,fortis 型,alacer 型と呼んでいます.
★4 英語では,ここの例文のように,ある形容詞は定冠詞とともに人間の集団を表わすことがあります.そのとき不定冠詞(a/an)を用いたり,形容詞を複数化(英語の形容詞に複数形はありませんが)したりはしません.
★5 このことは文意をはっきりさせるので,読解するとき好都合です.
★6 解説すれば,verum は形容詞 verus(真実の)の中性形であり,中性形は抽象名詞として使われます(§29).すると真理を意味する名詞 veritas
との違いは単に“形”の違いだけになる,ということです.
さらに,その前の文章にさかのぼれば,形容詞 verum がこの属性をもつ主体なら“真であるもの”ですが,属性そのものを問題とするなら“真であること”を意味し,これは“真理”と異なりません.