余談:句読法について
文章には句読点というものがあります.日本語では,(1)あることを述べた文の最後に句点「。」,(2)また文中で,読みやすく正確な理解を助けるために読点「、」を付けています.江戸時代以前の古文には句読点が存在せず,その発生が歴史的に新しいこともあって,その付け方には明確な規則(文法)がありません.上記の(1),(2)ぐらいのことしか決まっていませんし,これで用が足りています.
しかし,英語はこのようではありません.明確な句読法が存在し,決していい加減な使い方は許されません(他のヨーロッパ言語も同様でしょうか?).例えば文中の whichや or の前にコンマ「,」があるかないかで,その意味はまるっきり違ってきます(本書67ページ参照).
この余談では論点を狭め,問題の焦点を文の最後の区切りだけに当ててみます.ここの文選でも文の終わりに三種類の記号がでてきます★1.すなわち,(1)ピリオド(終止符)「.」(2)セミコロン「;」(3)コロン「:」です.そしてこれらの記号は“文の間,文同士”の「論理的な結合の度合い」を定めているのです.
いくつかの文がまとまって,それら全体で一つの主張などが述べられるとき,full stop とも言われるように,その最後に終止符が置かれます.すなわち,一連の文の「論理的な」終わりを示しています.また,一つの論述などが(論理的に)完結していない場合,それらの文章はセミコロンで繋ぎます.「Aであり,(それとは別に)Bであり,そこでCである」という論理になっていれば,「A;B;C.」という形になります.このときAを補足説明したり,その理由を述べたくなることがあるかもしれません.「Aであって,それはaであるからであって,……」というような場合,「A:a;〜」という構成になります.すなわち,前後二つの文同士の間に,より密接な関係があるとき,その間をコロンで繋げるのです.
まとめれば,一つの論理上の叙述の終わりをピリオドで,まだ叙述の途中であることをセミコロンで,前の文を直ちに受け継いでいることをコロンで示すのです.
これら違いを明確にするため,直訳を標榜するこの文選の訳では,1ピリオド「. 」を“終止符+改行”,2セミコロン「;」を単なる“終止符”,3コロン「:」を“――”で表示してみました.ここから,日本語では表現されることのない★2「論理の結び付き」を“句読点から”味わうことができると思います.
★1 編集者による現在の英語における標準的用法に従った句読点が付けられており,(複 製版などに見られる)スヴェーデンボリ自身の句読法とは異なっています.
★2 日本語の句点は「。」の一つしかない(!)ので,訳すとすれば,どうしても,どれも同一となってしまいます.それにしても,ラテン語(英語も)は論理を重要視する言語なのだなあ,と感じます.